大切な土地を守るために
不動産(土地、建物)には二種類の登記があります。一つは不動産の権利に関する登記、そしてもう一つは不動産の所在や形状、状況などに関する表示に関する登記です。
この2つの組み合わせにより評価された土地や建物に対する権利が確定します。
権利に関する登記
不動産の物理的な現況を公示し、所有権や抵当権などの権利を公示するとともに、効力発生た対抗要件を得ることができる登記です。
権利に関する登記は「司法書士」がお客様の代理で行うことができます。
表示に関する登記
表示に関する登記とは、土地や建物の所在や形状、利用状況等を調査・測量して図面や資料を作成して「どこのどういう土地・建物なのか」を確定させる登記です。
表示に関する登記は「土地家屋調査士」がお客様に代わって行えます。
よく聞く「測量士」って?
測量士は測量に関する計画作成や実際の測量業務を行えますが、登記を目的とした測量は行なえません。建物や橋、トンネルなどの工事のために必要な測量を行うことが主な業務となります。
簡潔にまとめると「土地家屋調査士が土地・建物の現況を登記し、それに関する所有権などの登記を司法書士が行う」と言うことになります。
土地家屋調査士が行う「測量」
不動産売買などの際によく出てくるのが「現地測量(現況測量)」と「用地測量(境界確定測量)」。その他にも地形の高低差を調べる「地形測量」、空撮写真などを利用する「写真測量」などがあります。
ここでは、土地の売買や相続、都市開発などの基本となる現地測量と用地測量についてご紹介します。
土地を測量し測量図を作成する「現況測量」
現況測量ではその土地(現地)で測量機器を用いて地形や地物などの状況を測定して地形図のもととなるデータを作成します。
「現況測量」が必要なのはこんなとき
以下のような場面では「現地測量」が必要となります。
- 建物を新築するとき
一番多いのが建物を新築する際の現地測量です。その土地に建てられる建物の設計に必要な間口や奥行き、土地の形状や面積などを測量します。 - 土地の高低差を調べるとき
敷地内に高低差がある土地の現状を把握するための調査を行います。 - 土地の評価
相続税の計算や土地を販売するときには、その土地の間口や奥行き、形状、面積など測量して正確な評価を行います。 - 真北の調査
新しく建物を建てる際に問題となる日照制限(北側斜線制限)などを調査します。太陽観測等のデータから計算で「真の北」を求めます。その情報を元に建物の高さや傾斜などを設計に反映します。 - 測量図の真偽の確認
土地を購入する際に、売り主から提示された測量図が正しいものかどうかを確認するために「点検測量」と呼ばれる調査を行います。
土地と境界を調査する「用地測量」
用地測量では土地とその境界などについて調査を行い、求められる資料や測量図を作成します。よくあるのは隣の土地の所有者などとともに土地の境界を確定させるための「境界確定測量」。測定した測量図を元に「境界杭」を設置して境界確認書の取り交わしと測量図作成を行います。
隣地との境界を確定させる「境界確定測量」
以下のような場面で「境界確定測量」が利用されています。
- 土地を売買するとき
一番多く利用される場面は土地を売買するときです。少し前までは土地売買には「公簿面積(登記簿に掲載されている面積)を元に行っていましたが、地価が高騰するようになってからは土地を購入する側が土地の境界を確定させたうえで実測面積により購入金額を判断することが多くなりました。また、購入後の隣接する土地の所有者との争いを避けるために現地で立ち会いの元で境界を確定させるケースも増えています。 - 相続時に土地を物納するとき
相続税の納付のために土地を物納する場合にも「境界確定測量」が行われます。平成十八年度の税制改正により、土地を相続する際には相続開始から10ヶ月以内に境界確認書・測量図・登記事項証明書などの必要書類の提出が義務付けされました。これらの書類が揃わないと土地を物納することができません。 - 境界杭がなくなってしまった場合
道路工事や建築工事などで境界を明示するための「境界杭」がなくなってしまった場合も改めて境界確定測量を行ってから隣地の所有者立ち会いのもとで新しい境界杭を設置します。 - 土地を分筆するとき
一つの土地を複数に分割する「分筆」を行う際にも境界確定測量が必要です。隣地との境界が明確になっていないと分筆が行なえません。 - 寄付や払い下げ
所有する土地を寄付したり国有地や県有地などの公有地として払い下げを行う場合も土地を確定するために「境界確定測量」が必要になります。これらの手続きは非常に煩雑なため、土地家屋調査士や役所に相談して行うのが一般的です。
境界確定測量には隣地の所有者の協力が欠かせません。多くの隣地がある場合、一度の測量ですべての境界が確定できるケースは稀です。長期にわたり測量が行われることを念頭に、時間的に余裕のあるに大切な財産である土地を守るための測量をご検討ください。